20070908

"Prerudium and Allegro" Fritz Kreisler

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ド下手ではあるものの 一応『チェロ弾き』を自称していた私ですが
今年の初め カルテット仲間の友人が一丁のヴァイオリンを貸して下さいました。
えーいいのぉー などと三顧の礼は 全然省略。
ヴァイオリン曲が好きでヴァイオリンに興味津津だった私は
喜びイサンで飛びつきました。
チェロからヴァイオリンに転向した友人がいるので
そう違いはないだろうとタカをくくっていた私がバカでした。

ヴァイオリンは 本当に難しい楽器なんですね。
まず 音楽らしい音が出ない。
映画『ヤング・シャーロック』の笑い所の如く 殺人的怪音しか出ないのです。
それでも 周囲に内緒で黙って半年間
市販のCD付き教本を1から6までコツコツお勉強してみました。
麗しの小泉首相もお弾きになったキラキラ星から始め
ブラームスのワルツ ヴィヴァルディのVn協奏曲 コレッリのラ・フォリア など
一応 曲らしいモノは弾ける様にはなったのですが
でも 音楽とは程遠い有り様なのです。 悲しい程に 程遠い。

もうヴァイオリンは諦めようかしらと思っていたそんな折
恋人がとても素敵なヴァイオリンの曲を教えて下さいました。
恋人は 若葉マークドライバーの私の車に乗ってくださる度に
恐怖感の緩和の為か 大変素晴らしい名曲ばかりをかけて下さるのですが
その中に 未知の素敵な曲があったのです。
『素敵な曲ですね!雷が落ちるみたいです。いや 龍が昇るみたいかも。』
と喜ぶ私に 恋人は
『落ちたり登ったり 大変だぁ』と笑っていらっしゃいました。

曲名に疎い私は何度と無く曲名を乞うたのですが
私の性格を良くご存知でいらっしゃる恋人は 頑として教えて下さらなかった。
教えたら私が何をするか 嫌な予感をなさったのでしょう。

ですが 恋人よ。
私には『羞恥心が薄い』という強みがあるのですよ。ぬふふ。

いつもの如く恥をかきに 銀座の某店の店頭で
クラシック生き字引の様な店員さんに『今から歌う曲の曲名を教えて下さい』
と 音痴を承知で 冒頭一節を何度か歌って参りました。
そしていつもの通り 生き字引さんは笑いを顔中で我慢なさいながら
『クライスラーのプレリュードとアレグロ だと思います。』と教えて下さいました。
確かに彼は 作曲家であり ヴァイオリンの名手でいらしたそうな。
うん コレに違いないですね!
いつも本当にありがとう。 そして いつも本当にごめんなさい。

早速CD一枚と楽譜を買い 以来3ヶ月間この曲だけを熱心に練習し
先日の家出中も大きなチェロを友人に預けて
ヴァイオリンを持って行き自主特訓をしておりました。
(※チェロは飛行機旅では一人分余分に航空券を購入する必要があります。
一方 ヴァイオリンは手荷物扱いでOKですので身軽なのです。)


そして恋人と仲直りの後 ある月の明るい夜 恋人に演奏を聞いて頂きました。
あぁ あの時の 『え ヴァイオリン??』 とギョっとなさった あのお顔。

いや 我ながらナカナカな演奏だと思ったんですよ ホントに。
でも 演奏後 無言の誰かさんが控えめに次いだ二の句は

『稲妻とか龍より ... おおさんしょうお かな ...』 でした。


... チェロの練習 頑張ります。

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