20070805

極限から極限へ

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ここにある二つの放物線は重なって見えるかも知れませんが
どんな事が遭っても 決して交わることはありません。
点の集合であるその線は収束し続け 永久に軌道を描き続けます。


気軽なスタートでした。
元々持ち物が少ないので トランク一個と一丁の楽器が荷物。
全部を無くす旅でした。

念の為 部屋の至る所と持ち物と送る物を全て拭きました。
3つの鍵と1つの宝物と携帯と全財産と
準備しておいた数種類の紙の束を恋人に送り
二丁の楽器を人に預かって頂き
最後に 残したものをある団体に寄付しました。

北国と別荘地と関西のホテルにお世話になっていたのですが
非日常や快適さを楽しんでいたのは最初の三日だけ。
どんなに良い部屋でも ハニュウの我が家に勝る物は無く
こんな根無し草の私に完璧なサービスを施して下さるスタッフさん方に感謝する度
どんどんと寂しくなっていました。
また 盛大にお世辞を言う人に逢う度 寂しさが募りました。
何も言わず 無視して放って置いて下さる方がずっと嬉しいのに。
こんな空っぽな私の外だけを見
人は自分が見たいものだけを 勝手に私の中に映す。
そんな酷くいじけた意地の悪い事を思い そんな自分に嫌悪し
ますます寂しくなってゆきした。

東京へ戻り 迷わず以前住んだ小さな部屋に戻りました。
同じ場所 同じ光 同じ無
恋人と出遭った夜から 続いた眠れない日々
どうにも出来ない胸の苦しさと 止まってくれない涙
ある朝 自分は初恋をしているのだと 気付いた部屋でした。

当時 この部屋の天井の高さが気に入っていました。
でも 妙に低くなった気が。
確かに あれから身長が3㎝伸びました。
かつてした様に 部屋に積もる何かを抱くが如く 床に横になりました。
何も無くても 世界一幸せだった自分を探してみる。
あの人無しの幸せなぞ 果たして在り得るのか。

ふと 間違え様が無いエンジン音が聞こえた気がしました。
まさか と思い 再びまぶたをまどろわせようとした
次の瞬間 私は荷物掴んで部屋をダッシュで逃げ出しました。
3つの出口のうち 最も逃げ口らしい出口に飛び込んだら
美しい銀髪と素敵な背中が見えました。
迂闊なことに一瞬見とれてしまったその人は
母親とはぐれた子の様な眼をした 私の恋人でした。

その後 灼熱の9時間。
612とspyderの鬼ごっこは
汐風を喰らい 首都高の熱気に呷られ 渋滞に炙られ 夕立に叩かれて
可哀想なspyderが黙りこみ 別荘地の外れで鬼にタッチされて終りました。

今度は 私が鬼

Caro mio ragazzo,Tifosi.
A mali estremi estremi rimedi.
Macchina, Vino e Venere riducono l'uomo in cenere.
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