たがための
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Whatever pain the decision might cost her,
she was determined to keep her sadness to herself.
―The wild geese
親代わりで 恩人で 憧れで 大先輩で
唯一無二の親友で 忠心を誓った大将で
そして 父の様な 兄の様な 弟の様な 赤ちゃんの様な。
そんな人と 別れました。
その人は 私を救って下さり 沢山の事を教え 守り
色々なものへ導いて下さった。
私は この人の為なら何だってする
どんな事でもお役に立ちたいと切望し続けていました。
私は 手塚治虫さんという漫画作家さんの初期作品【I・L】の
主人公アイエルが大好きです。
好きな人の為に 自分自身をあらゆる役に立つ道具にする。
姿形を変え 時に母の様に篤く大きく 時に悪魔の様に冷酷になり
危険も厭わず本当に何でもする彼女の忠節心と行動力と熱意こそ
好きな人を幸せに出来る愛の形の一つとして憧れています。
私も そんな理想の恋人になりたかったのです。
なのに私はその人に甘えるばかりでした。
アイエルどころか 人間昆虫記でした。
その人の為にすることでも 結局は私の方が大きな糧を頂いてしまう。
『次こそは』 といつも思うばかりで 結局また『次こそは』 でした。
『君はずるいよ 時々憎くてたまらなくなる』
とあの人は笑って言いました。
私も自分のずるさを恥じ 自分が憎くたらしかった。
大切なあの体がバラバラになってしまうのでは というほど辛い時期にも
私は何一つ役に立てなかった。
ただ傍に居て ある意味で守るくらいのことしか出来なかった。
それなのに 私に礼なんか言って 優しくして下さったりする。
あの人の辛さを知っているつもりだから その優しさがかえって辛く
ただ非力な自分が憎くて情けなかった。
なのにその人は 更に私に色々な事をして下さった。
それは私の為だけのことであり
周囲の人達を幸せにはできないことで
なによりもその人にとってマイナスにしかならない。
それでもその人は無理に押進めようとなさった。
大好きな瞳の奥の決意 腕を掴んだ力強さ
大きく変わってしまう状況 周囲のざわめき。
もう充分。
私は初めて 誰かの為に自分を捨てようと決めました。
それが 初めて出来るあの人への恩返しだと信じました。
姿を消し 違う人になる ある意味私は達人だと自惚れていたのに
誰も私の所在が分からなくなっている筈だったのに
どうやって見つけたのか 東京に戻ったら居所がバレていました。
本当に 何をなさったのか
久しぶりに見る怒った愛しい顔
『心変わりなら仕方ない だが黙って消えたりするな』
初めてあの人の事を馬鹿だと思いました
誰が貴方から心が離れるというのだろう
消えるより辛いのは 気持ちを殺し 嫌いな振りして傍に居る事
でも こうして戻ってしまった
辛い でも 幸せ
私はおためごかしな 本当に酷いエゴイストです
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