おかえりなさい
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恋人と 久しぶりに映画館へ行きました。
私は幸いな事に 大変良い職場と上司・先輩・同僚に恵まれ
日本一幸福な働き手だと思うのですが
恋人は今年要職を退くまで その苦労は推し量る事も出来ない程でした。
呆れるほどのジレンマ 受けた傷
その痛み辛さを抱えた恋人に 私は何もしてあげる事が出来ず
ただ傍にいる事しか 出来なかった。
内情を話す事も出来ず 愚痴も洩らさず
ただ やるべき事をこなし 驀進行く横顔を
ただ 見つめ 抱きしめ 祈る事しか出来なかった。
今までの色々 こみあげる色々
目から溢れ出した恋人の 痩せた背を 肩を
暗闇の中で抱きしめることしか出来ない己が憎く
自分の非力を悔いました。
貴方が眠っている間に 貴方を悩ます全てのものを 一掃したい
いつだって 貴方を一番守る人になりたい
なんだってさせて
でも 何もできやしない
この先 一緒に過ごす穏やかな日々
どんなに暖かで幸せな日でも
恋人は その全身で受け続けた
冷たい雨の感触を 思い出してしまうかもしれない
あちこちの傷口から いまだ血が吹き出ていること 知っている
その傷 私にふさがせてほしい
もう大丈夫
もう笑わなくていい
何かを演じる必要など 何処にも無いんですよ
何もしないで
ただ ここで生きていてほしい
ただ それだけでいいのだから
貴方は 貴方でありさえすれば それでいいのだから
見てしまったもの
焼きついてしまったもの
涙で流して
生まれた日のようにたくさん泣いて
貴方へと生まれ変わって下さい
お帰りなさい。
本当に お疲れ様でした。
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